苔のむすまで

一介のデザイナ。ステキなかけらを集めて。

日本刀

刀剣の姿全体と、光を反射させ、地鉄(じがね)と刃文(はもん)を鑑賞する。 美術品として刀の景色を見ることが現代においての日本刀の楽しみ方。 日本刀は玉鋼という純度の高い鉄を使って作られる。

鎌倉時代の名刀正宗は、表情豊かな波打つような光の線、刃文とその外側の乱れ映りが見るものの心を 捉える。 神秘的な力を感じさせる冴えた光と粒子、強さと柔らかさを兼ね備えた清らかな美を楽しむ。しかしそれは、どこまでも使うために研ぎ澄まされた結果の美である点が本質を感じさせる。

日本刀を収める拵(こしらえ)にはその時代の最先端の装飾技術が費やされた。特に江戸時代などでは、人とは違うデザインで主張するのが流行る。特に鐔(つば)は最も多彩な装飾が施される。代表的なものでは、杢目金という鉄で木目のようなユニークな模様をあしらったものがある。明治以降途絶えた幻の技とされる。金銀銅などの色違いの板を蓄層させてつくられ、深い奥行きと表情を感じさせる。小さな鐔にそのような手間暇と創意工夫が施されたのは、 刀の圧倒的なエネルギーを収めるための、それに見合った拵えを職人たちが配慮したからに違いない。