男の和装
着物の柄は桃山時代までは男女の区別なく、クジャクの様に華やかさを競っていた。
アバンギャルドな柄の着物はとても色気があり、日本男児独特の文化を象徴するものである。
江戸時代に発せられた贅沢を禁止する奢侈禁止令という逆行に対しては、
一見地味に見えながらも江戸小紋などの粋なお洒落を探求してくことになる。
男の着物は感性や所作がすべてあらわれる、最高の男磨きとなる。
TPOにあわせれば着物は自由。
羽織はジャケットのようなもの。カジュアルな着流し。羽織と袴はフォーマルな場で。
着姿は帯を締める位置で決まるといってよい。
格好の良い着姿は上半身がゆったりと、下半身はすっと締まっている。
帯の基本は角帯。博多織、西陣織が代表格である。
帯選びにルールは無いが、着物との素材感を少しずらすくらいが粋である。
帯の締め方は腹の下から腰骨にしっかりと当てて後ろ上がりに締める「前下がり後ろ上がり」が基本。
こうすることで、上半身は恰幅の良さが強調され、下半身はすっきりとシャープに見える。
着物は着こなしによってその人の個性が引き出され、強調されるもの。
「裏勝り」こそ粋の美学。
たびたび発せられた奢侈禁止令により、
どうにかお洒落を楽しもうとオモテの派手な模様を羽裏に隠すようになったことが起源とされる。
不思議なもので、羽裏の柄はその人の教養や審美眼など、見てしまった人に色々と想像させるものであり、
脱いだ時など、さりげないシーンでの自己表現として、とても日本的なコミュニケーションだと感じる。
また、自分だけがステキなものを隠し持っているという男性的な美学にも通じる。
当然自分から見せたのでは野暮だが、それでもどこか人に見せたいというギリギリの心境が男心を魅惑する。
見えないところによろこびを秘める。秘めるからこそ花である。
織が生み出す立ち姿の美。
袴は礼装にかかせないものであるが、とにかく立ち姿が格好良い。
足下からすっと背中に伸びる美しい背筋を生み出すのが袴の魅力である。
生地の織の技にその美しさの秘密があり、極細のたて糸がち密さをつくる。
そしてよこ糸はよりがかけられており、皺をつくりにくくしている。
お洒落にはメインの着物自体よりも、
その着こなし方をどう自分らしく楽しむかが大切である。