苔のむすまで

一介のデザイナ。ステキなかけらを集めて。

苔の魅力

ほどよく手入れされた庭に生す苔は、紅葉や青葉などを引き立てる名わき役。
苔の種類は世界で2万種ほどあり、日本には1600種以上あるため、微細なテクスチャ感の違いは情報量の多さを物語っており、我々の目を楽しませてくれる。日本の代表的な品種では、スギゴケやスナゴケ、ホソバオキナゴケなどが有名。

日本人は苔に神秘性を感じ取ることができる少ない人種ではないだろうか。 苔は日本人にとっては、侘び寂びや幽玄の世界など禅的な日本を表現する代表的な植物と言える。
庭一面を柔らかく包み込んだ苔のある風景は、まさに幽玄の世界。
夢窓疎石が禅の修行の場として開いた西芳寺にある一面に広がった苔には、世俗から離れた静寂の世界を感じることができる。

また、水を使わずに自然の風景を表現した枯山水にも苔は重要な役割を担っている。
日本の代表的な作庭家には重森 三玲がいる。
枯山水の砂は大海原を、岩組みは険しい山々を、そして苔は命の宿る森を表現している。
命の宿る森とは人間や動物の立ち入ることができる場所で、その営みを表現しているそうだ。
ここでも苔は砂や石を非常に良く引き立てる、縁の下の力持ちとしての役割が大きい。
緑と茶の色のむら、不揃いな長さが自然の趣をつくりだし、
表面のうねりと相まって、自然の山に最も近い風景を出すことができると考えられている。

その他に苔が重宝される場としては盆栽ははずせない。
静かに長く育ってきたような豊かな時間の流れを感じさせ、見る者に懐かしさをそっと感じさせてくれる。
盆栽の上の味気ない大地に、苔が生すことで、風情や古さ、品格、神々しさまで感じさせる。